日本フッ素化学会

English

イベント

フッ素化学国際会議(ISFC)

平成24年の夏には、日本で3回目のフッ素化学国際シンポジウム(ISFC)が萩原理加と山崎孝の共同組織委員長を中心に京都で開催されました。海外21ヵ国から176名、国内を含めると実に480名もの参加者を得て、有機合成化学、先端材料科学、先進医療科学、エネルギー・環境科学など多彩なフッ素化学関連の研究発表があり、フッ素化学に寄せられる期待が大きいことが示されました。以下に、その実施報告をFluorine, vol. 5, No. 1,2合併号, 通巻No. 8より転載致しました。

「第20回フッ素化学国際会議 を終えて」

萩原 理加、山崎 孝 第20回フッ素化学国際会議組織委員長

第20回フッ素化学国際会議(The 20th International Symposium on Fluorine Chemistry)は平成24年7月22日~27日の期間、京都テルサにて484名(一般:331名、学生:102名、同伴者:40名、来賓:11名)と予想を上回る参加者を迎えて行われた。本国際会議が日本で開催されるのは3度目であり、1955年以降3年に1度開催されているフッ素化学国際会議が、15年から18年、即ち5回から6回に1度の周期で日本開催となっていることは、我が国のフッ素化学者ならびにその研究が、広く国際的に認められていることを強く反映した結果であると言える。今回は特に、日本フッ素化学会が発足してからは最初の日本での開催となり、20回という本国際会議節目の会議でもあった。世界的な不況や東北の震災など、当初懸念された参加者の伸び悩みが結果的には杞憂に終わり、主催者としては安堵の胸を撫で下ろしたものである。

会議は7月22日のウェルカムパーティによって始まり、多くの参加者が再会を楽しむ姿がみられた。7月23日にはオープニングセッションが行われ、新都山流小山東山先生による尺八の演奏に始まり、日本フッ素化学会会長淵上壽雄先生による日本でのフッ素化学の発展を中心とした開会の辞、本会議オーガナイザー萩原理加から参加者への挨拶が行われた。その後は口頭発表が三会場に分かれて行われた。

今回は、フッ素化学における様々な領域の最先端で研究されている27名の方に13カ国から参加して頂き、基調講演をお願いしただけでなく、次の世代を担っていく新進気鋭の若手研究者にも焦点を当てて、8カ国から15名の若手招待講演者を招くことができた。最終的には、この42件に加え、会期中に行われた Moissan Prize の受賞講演1件を含めて口頭発表は総計133件となった。今回、フッ素化学国際会議での初の試みとして、無機化学分野から"The 50th Anniversary of the Discovery of Noble-gas Reactivity(貴ガス反応性発見50周年)"という題目の、また、有機化学分野から"Utilization of Metal Catalysts for Preparation of Fluorinated Compounds(金属触媒を利用した含フッ素化合物合成)"という題目のミニシンポジウムをそれぞれ開催し、参加された皆様から高い評価を頂くことができた。前者では、この50年間に貴ガス化合物の研究が無機フッ素化学に与えてきた影響の紹介と関連分野における最新の研究動向が報告された。また、後者ではフッ素化合物の合成に遷移金属触媒が担っている重要な役割が議論されるとともに、今後、この分野の大きな発展を期待させるような内容が示された。本国際会議が扱った討論主題には、1)新反応と新材料、2)新機能と構造、3)生物活性物質、4)理論および計算化学、5)エネルギーおよび環境工学の5テーマがあり、内容に沿った熱い議論が交わされた。

ポスター発表は7月24日の夕方に行われた。およそ半数が日本からの発表であったが、外国人参加者も取り混ぜて熱心な意見交換が行われる場面が多く見られた。

また、優秀な発表を行った6名(Mr. Pier Alexandre Champagne (Université Laval,Canada)、Mr. Maciej Skibinski (University of St Andrews, UK)、Dr. Matthew Tredwell(University of Oxford, UK))、Mr. Fei Xu (Kyoto University, Japan)、Ms. Maria Ivanova(McMaster University, Canada)、Dr. Yuko Shiotani (Daikin Industries, Ltd., Japan)はバンケットに招待され、表彰状の授与が行われた。

会期中のソーシャルプログラムとして、7月23日には京都タワーホテル屋上ビアガーデンにて交流会が模様された。夕暮れ時とはいえ、まだ暑い中およそ300名の参加者が一堂に会し、サイエンスを超えた多くのトピックスについての歓談が行われていた。閉会後も多くの方がなかなか立ち去ってくれず会場の明け渡しに苦労したが、よほど楽しく過ごしていただいたためであろうと解釈している。また二次会としてカラオケに向かう外国人参加者が多く見られたのも興味深かった。このような交流を通じて、外国人の中での日本人のあり方などを改めて考えせられた。

7月25日はエクスカーションの日として一日オフとされており、同伴者なども含めて、参加希望者が京都ツアー2つと奈良ツアー1つに分かれて、観光バスにて寺社仏閣を中心とした名所を観光していただいた。

7月26日には、3年に一度執り行われるモアソン賞の授賞式が行われ、今回はフランスボルドーの ICMCB よりアラン・トレッソー博士が受賞者として表彰を受けた。これまで、本賞の贈呈者側として活動してきたトレッソー博士は自身の受賞に喜びを隠せない様子であった。その後受賞者による記念講演が行われた。同日には夕方より京都グランヴィアホテルにてバンケットが行われた。参加者は250名程度で、先斗町の舞妓の舞踊によって幕を開け、本会議オーガナイザーの山崎孝と学振フッ素化学155委員会委員長田口武夫先生より出席者への挨拶が行われた。

その後、伏見の酒樽で鏡開きを International Advisory Board のメンバーに行っていただき、日本フッ素化学会前会長中島剛先生のお声掛けで乾杯を行った。和やかな雰囲気の中歓談が行われたが、ポスター賞の贈呈、今後の国際会議の準備状況、モアソン賞受賞者であるトレッソー博士による永年にわたる彼と日本文化の関わりについての楽しい講演など、宴はあっという間に過ぎることとなった。最後には宇根山健治先生より今後のフッ素化学の発展に期待をこめた締めのお言葉をいただいて閉会となった。多くの参加者と言葉を交わすことができる非常に楽しい時間であった。

会期中に行われたステアリング・コミッティ・ミーティングでは第17回フッ素化学ヨーロッパ会議(2013年、フランス、パリ)、第21回フッ素化学国際会議(2015年、イタリア、コモ) 、第18回フッ素化学ヨーロッパ会議(2016年、ウクライナ、キエフ)についてオーガナイザーらから準備状況の報告があった。また、第22回フッ素化学国際会議(2018年)はイギリスのオックスフォードで、第19回フッ素化学ヨーロッパ会議(2019年)についてはポーランドでの開催が決定された。多くの日本人の方々にこれらの学会に参加していただきたいと思う。最終日のフェアウェルパーティでは、多くの参加者が友との別れを惜しみ、次回の国際会議やヨーロッパ会議などでの再会を約束しての散会となった。

最後に、本会議の開催にあたり、会の運営にご尽力いただいた組織委員の方々、ご協力いただいた日本学術振興会フッ素化学第155委員会をはじめとする学協会、助成団体並びに協賛企業の方々、そして本会議にご出席いただいた皆様に改めて御礼申し上げる次第である。

Page Top Page Top Page Top Page Top Page Top Page Top Page Top Page Top Page Top Page Top Page Top Page Top Page Top Page Top Page Top Page Top Page Top
Page Top